酸性化による土壌汚染について
酸性化による土壌汚染の原因
土壌汚染のもう一つの原因は、酸性化による汚染である。
酸性化の中にも酸性雨などの大気中の酸性化と土壌の酸性化がある。
元々、地球上では、大気中の二酸化炭素(約360ppmv)の存在により、通常の降水で雨水のpHは約5.6となる。
酸性雨とは、それに加えて、石油や石炭の燃焼により大気中に放出された硫黄酸化物や窒素酸化物などの大気汚染物質が、大気中で硫酸や硝酸などに変化し、降雨と共に再び地上に戻ってくることである。
土壌の酸性化とは、酸性雨が土壌に降り、酸性の状態になることである。
酸性化による土壌汚染の現状
酸性雨により、土壌や湖沼、森林衰退による降水生態系に被害を与え、また銅像などの文化財や建造物の損傷などにも影響を与えている。
また、農産物の代謝を妨げ収穫量を低下させるとともに、農産物の味や質を損なわせ商品価値を低下させている。
さらに、土壌の酸性化により、交換性塩基の減少やアルミニウムの可溶性、窒素の過剰供給による養分吸収のアンバランス、土壌微生物の活性低下、重金属の可動化などの影響も見られる。
酸性化による土壌汚染の対策
ヨーロッパでの取り組み
- 1983年にウィーン条約が発効された。この条約は主にヨーロッパにおける酸性雨などの越境大気汚染の防止を目的としている。
また、国際協力の実施や酸性雨モニタリングの実施、などが規定されている。
- 1987年にヘルシンキ議定書が発効された。この議定書は硫黄酸化物(SOx)排出削減に関するものである。
具体的には、硫黄の排出量を1993年までに、1980年と比べて少なくとも30%削減することを求めた。(1998年に発行されたオスロ議定書によって置き換えられた。)
- 1991年にソフィア議定書が発効された。この議定書は窒素酸化物(NOx)排出削減に関するものである。
具体的には、1994年までに窒素酸化物の排出物を、1987年時点の水準に凍結させることを目標としている。
また、無鉛ガソリンの十分な供給も義務付けている。
さらに、合意した25か国のうち12か国が、1989年から10年間で30%削減することを宣言している。
- 1998年にオスロ議定書が発効された。この議定書は硫黄酸化物(SOx)排出削減に関するものである。
また、欧州酸性雨レジームという枠組みの中で、酸性雨に関するRAINSモデルに基づいて締結されている。
さらに、窒素酸化物(NOx)の削減を定めたソフィア議定書でも用いられた、酸の沈着の上限を表す「臨海負荷量」という概念を採用している。
米国での取り組み
- 1990年の改正大気浄化法に基づいて、1995年から発電所に対する二酸化炭素及び窒素酸化物の排出削減計画が始まった。
(改正大気浄化法は、都市のスモッグ対策や酸性雨対策に重点を置いている。)
そして、改正大気浄化法の中で規制の対象となる発電所には、毎年「排出権」が割り当てられ、排出権保有量内に排出率を抑える、または、他の発電所から不足分を購入するという排出量取引制度が定められた。
日本およびアジアの取り組み
- 1980年代にヨーロッパ、特にドイツ(旧西ドイツ)において起こった森林被害などを教訓として、日本やアジアにおいても、将来的な人口増加や石炭依存のエネルギー構造、酸性雨による悪影響が心配され始めた。
そこで、環境庁は、1993年から東アジア各国及び関係国際機関の専門家の参加を得て、東アジア酸性雨モニタリングネットワークに関する専門家会合の開催を始めた。この会合での成果を機に、「東アジア酸性雨モニタリングネットワークに関する第1回政府間会合」が、1998年に開催された。この会合では、活動目的や組織などのネットワークの基について、各国の意見が図られ、暫定的なものが取りまとめられた。
⇒農薬による土壌汚染についてはこちら
Topへ戻る

|